傷病手当金の利用と治療・就業の両立について

2020.12.24

Q:女性社員が乳がんと診断され、入院して手術を受けることになりました。
本人は治療しながら勤務を続ける意思がありますが、状況によっては転職も視野に入れざるを得ないと考えているようで、傷病手当金の支給が終わるまでにどういう選択をすべきか相談されました。
サポートする会社としては、どのようにアドバイスするのが適切でしょうか。

A:傷病手当金は療養のため労務不能となった被保険者に最長1年6カ月間支給され(健保法99条)、1年以上被保険者期間があれば途中で退職しても継続して受給することができます(同法104条)。

ただし、その間に退職した場合に、求職活動に入り雇用保険の基本手当を受けようとすると「労務不能」でなくなるため、傷病手当金が受給できなくなる点には注意が必要です。
支給期間終了をもって退職するか、基本手当の受給期間を延長(雇保法20条)すること等を考えておいたほうがいいでしょう。

がん等、長期の治療が必要となる病気では、支給期間満了後に障害基礎年金・障害厚生年金の受給手続きを採るのも有効と思われます。
年金が支給されると、原則として再発した場合に傷病手当金が受給できませんが、年金額の方が低ければ差額が支給されます(健保法108条3項)。

参考:労働実務事例研究(2020年版)